今月は超ホットなクラウドのお話です。その名をMaaSと言います。「聞いたことが無い!」
というお叱りがすぐに来そうですが、当然です。私が発案して、初めてこの文章に使った
からです。MaaSはMedia as a Servesの略語です。本学では従来サーバ上に有ったシステム
をそっくりクラウド仮想サーバに移行するIaaS(Infrastructure as a Serves)を中心に
300システム以上をクラウド化してきました。またパソコンの処理部分をクラウドに委ねる
DaaS(Desktop as a Serves)も1000台以上のシンクライアントとして実現してきました。
これらの活動は省エネ、情報セキュリティ管理強化など大きな効果を生み出しました。
しかしそれらは付随効果であってゴールの重要なもののひとつは「大学のすべての情報を
世界中に発信すること」です。つまり、「大学は独立した放送局であり、かつ利用者の集合
である」という形の実現です。そのためにはMaaSが必須です。「マスからマースへ」という
韻も踏んでいます。
ではMaaSとは何でしょうか。それに応える事件がいま米国で発生しています。それはAerio
(エーリオ)事件です。この事件は「地上波による従来のマスメディア」対「インターネット
によるソーシャルメディア」の典型的な戦いそのものだからです。前者の代表がABC,BBCなど
の既存のTV局、後者はAerio社が代表です。Aerio社は利用者ごとに小さなアンテナを準備
し、地上波のTV番組を受信しクラウド上の記憶装置に保管し、必要に応じてインターネット
経由で利用者に提供する、というものです。CMカットも可能です。まさに新発想のSaaSです
がその巨大な破壊力ら私はMaaSと名付けました。1か月の費用は1人あたり$12です。
著作権法では「公共電波で受信できるコンテンツを利用者だけの目的で記録することは合法」
ということになりますのでAerioは理論的には合法です。実際、米国の連邦裁判所では「合法」
の判断が出ました。これを聞いた従来のテレビ局関係者は驚愕しました。なぜならこのMaaS
が広がると収入の大半が絶たれるからです。日本と違い米国のTV局の収入の多くはCMと
ケーブルテレビ局の権利料から成立しているからです。裁判は最高裁まで上がりました。
そして最新の判決は「条件付き違法」ということで現在はAerio社のサービスは停止して
います。この事件で重要な事実は「電波やケーブルでしか実現できなかったマスメディア
配信方式がインターネットで可能になった」という点にあります。インターネットを流れる
1日のデータ量はペタ(10の15乗)をはるかに通り越し、ゼッタ(10の21乗)バイトに
達しようとしています。
この様な環境の中で組織固有の情報基盤≒LANはどんな意味を持つのか、LANは単なるデータ
流通の邪魔者ではないのか、と思うのは自然なことです。どの様な経過をたどるか分かり
ませんがLANの無い情報基盤がもうすぐ当たり前になってきている、と感じる今日この頃です。
次回は私たちが開発中の驚異のMaaSを紹介できると思います。「大学の教育、あるいは企業
活動のありかたを根底から変える可能性を持ったMaaSの誕生になるかも」と期待しています。
(編集長1:井上センター長)